*kleu-
*kleu- は 印欧祖語 の語根。
コアイメージは「聞く to hear」。
※TOEIC 頻出 4,060語には、*kleu- を含む単語が、5 語あります。
🇬🇧英語の単語例
listen / LI・sten 聴く
loud / LOU・d 音が大きい
Slav / SLAV スラブ人
Slavic / SLAV・ic スラブの・スラヴ語
slave / SLAV・e 奴隷 など
🇩🇪ドイツ語の単語例
lauschen / LAU・schen 聴く
laut / LAU・t 音が大きい
Slawe / SLAW・e スラブ人
slawische / SLAW・ische スラブの・スラヴ語
Sklave / SKLAV・e 奴隷 など
🇫🇷フランス語の単語例
slave / SLAV・e スラブ人、スラブの・スラヴ語
esclave / e・SCLAV・e 奴隷 など
🇮🇹イタリア語の単語例
slavo / SLAV・o スラブ人、スラブの・スラヴ語
schiavo / SCHIAV・o 奴隷
ciao / CIAO チャオ など
🇪🇸スペイン語の単語例
eslavo / e・SLAV・o スラブ人、スラブの・スラヴ語
esclavo / e・SCLAV・o 奴隷 など
🇷🇺ロシア語の単語例
cлушать / SLU・shat’ 聴く
словарь / SLOV・ar’ 辞書
славянин / SLAV・yanin スラブ人
славянский / SLAV・yanskiy スラブの・スラヴ語 など
🏦ラテン語の単語例
slavicus / SLAV・icus スラブの・スラヴ語
sclavus / SCLAV・us 奴隷(中世ラテン語) など
「L」は流音といわれ、「流動的なモノ、長い・線状のモノ」を表すと言われています。
本ページのタイトル画像のように、耳をとおして「音が流れ込んでくる」様子を、古代人は「ルー」という擬態音で表現したのではないかと思います。
印欧祖語の「k」音は「k>s」変音を経て、古代教会スラヴ語(ロシア語の前身)では、スラヴ人のことを Sloveninu と言いました。「共通の言葉 slovo を理解する人々」が原義です。
その他の変音のパターンとして「k>sc, sch, sk」がありますが、言語によってアルファベット表記が異なるものの、音としては「スク」です(イタリア語 ciao の「チ」音は、さらなる変形)。
もうひとつは、「k>0」つまり「k」が脱落するパターンです。
さて、英語では、スラヴ人 Slav、奴隷 slave が似た単語になっていますが、その他の西欧語でも同様です。
古代、戦争で捕らえられた人々は奴隷として扱われましたが、「スラヴ人」捕虜を指す言葉を「奴隷一般」と同一視して呼ぶようになったためです。
こうした同一視は、ギリシャ発祥と言われています。
その後、ローマを経て、西欧諸国にも、「スラヴ人、奴隷」を同じような単語で表すことが定着したようです。
おもしろいのは、イタリア語の挨拶ことば「ciao チャオ」の語源も、Slav, slave と同じだということ。
奴隷をあらわす「schiavo スキヤーヴォ」がなまって、「ciao チャオ」になったんですね。
由来は、「私はあなたの奴隷です=あなたの意のままに」という挨拶表現です。
さて、印欧祖語 *kleu- は、印欧語族の男子名にもしっかり残っています。
英 Lewis, Louis ルイス、独 Ludwig ルートヴィヒ、仏 Louis ルイ、伊 Luigi ルイジ、西 Luis ルイス など。
ラテン語 Ludovicus ルドヴィクス から語源を探ると、*kleu-(聞く) + *weik-⁵(戦う・征服する cf. victory / VIC・tory など)。
「戦いで聞こえし者(勇名を馳せる者)」という意味ですね。
ヨーロッパの王室で好まれた名前です。