日本語・印欧祖語の意外な関係|日本語になったサンスクリットの語源を探る

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日本語には、サンスクリット語から入ってきた言葉が結構あります。
そのほとんどはインド思想や仏教の用語で、多くは中国(漢字)を経由して日本にもたらされました。

ここまでは、まあ、知られた話ですね…。

じつは、日本語になったサンスクリット語の語源を遡ると、「日本語と印欧祖語の深い関係」が見えてくるんです!

「サンスクリット語 > 日本語」というテーマでも、歴史の話題として十分におもしろいのですが、「印欧祖語 > 日本語」という話になりますと、インパクトが変わってきます。

とくに、このサイトを訪問して下さった語学好きのあなたにとって、「日本語と印欧祖語」の話題は、見逃せないですよね?

サンスクリット語もれっきとした印欧語族の一員なので、サンスクリット語を遡ると、多くの言葉が印欧祖語の語源にたどり着くんです!

そして、探索の向きを変え、印欧語族から時代を下ってみると、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語といった、おなじみの言語のなかに、同源語(語源が同じ単語)が見つかります。

ここでは、 「日本語・印欧祖語の意外な関係」を、日本語になったサンスクリット語の語源から探る旅に、皆さんをお連れしたいと思います!

サンスクリット語とは

サンスクリット語について、ポイントを列挙してみます。

  1. サンスクリット語は、古代に、インドを中心とする南アジアから東南アジアで話された言語。
  2. 印欧語族(インド・ヨーロッパ語族)> インド・イラン語派 > インド語群 に属しています。
  3. 現在のインドでも、少数ながらサンスクリット語を母語として話すひとがいるようです。
  4. 共通祖先「印欧祖語」の大きな幹から、インド・イラン語派が分岐したのは 4,600年前、インド語群が分岐したのは 2,900年前 と言われています。
    (Wikipedia > インド・ヨーロッパ語族 > 印欧語族の歴史 > 系統樹と年代
  5. 日本との関係も深く、仏教・仏典とともに多くのサンスクリット語が中国を経由して日本に持ち込まれました。
  6. 日本語の「五十音図」は、サンスクリットの伝統的な音韻表(発音表)に影響を受けているといわれています。
  7. そして、忘れてはならないのは、「印欧祖語」との関係。
    イギリスのウィリアム・ジョーンズ(Sir William Jones)の功績についてです。
    彼は、裁判官としてインドに赴任していたときに、古代ギリシャ語、ラテン語、古代ペルシア語と、サンスクリット語が類似していることに気づき、これらの言語は共通の先祖に遡れるのではないか、という説を発表しました。1786年のことです。
    これを受け、これらの言語の「ルーツ探し」が始まり、やがて「印欧祖語」の再構築にいたるわけです。
    私が、本サイトを運営できるのも、こうした事情によるわけですね。感謝!

この後、サンスクリット語由来の日本語の数々を紹介していきますが、この記事の特徴は、

  • 「サンスクリット語-日本語」の関係だけでなく、サンスクリット語の源流にあたる「印欧祖語」にまで遡って語源を見ていきます。
  • そうすることにより、「サンスクリット語-英語・仏語・独語などの欧州言語」の関係も見えてきます!

最後に、ほとんど知られていないのですが、「サンスクリット語はロシア語に似ています」。
詳しくは下記をご覧ください。

サンスクリット語由来の日本語と語源

では、日本語になったサンスクリット語について、語源やヨーロッパ各言語との関係を見ていきましょう。

チャクラ

インドのアーユルヴェーダ哲学・伝統医学で、身体エネルギーの連携中枢をあらわす「チャクラ chakra」。
ヨガ(正確には、ハタ・ヨーガ)で良く使われる言葉です。

    • 日本語 チャクラ の語源は
    • サンスクリット語 चक्र / cakrá
    • 印欧祖語 *kʷékʷlos(輪、車輪 circle, wheel)

語源から、いろいろなことが分かります。
まず、印欧祖語 *kʷékʷlos から派生した言葉を、多言語展開してみましょう。

    • 印欧祖語 *kʷékʷlos の派生語は
    • 古代ギリシャ語 kúklos / κύκλος(円・環)
    • 英語 cycle(周期)
    • 仏語 cycle(周期)
    • 伊語 ciclo(周期)
    • 西語 ciclo(周期)
    • 独語 Zyclus(周期)

*kʷékʷlos はじつは重複語で、もとのかたちは、*kʷel-¹ + *kʷel-¹ なんです。

印欧祖語 *kʷel-¹ の意味は、「回転する、徘徊・移動・逗留・居住する revolve, move round; sojourn, dwell」。

なので、*kʷékʷlos の意味は、「回る to turn + 回る to turn」です。
日本語 klu klu / クルクル と、音・意味ともにピッタリですね!

「回転する」様子を表した擬態語ですが、ユーラシアの西と東で、古代人の音象徴(sound symbolism)が似通っていたため、と考えていいかもしれません。

こんどは、向きを変えて時代を下り、*kʷel-¹ の子孫の言葉を見ていきます。

    • 印欧祖語 *kʷel-¹ の派生語は
    • ラテン語 colus(糸巻き棒)
    • 露語 koleso / колесо(環)
    • 英語 wheel(車輪)< 古英語 hwēol
    • 英語 colony, culture(居留地、文化)
    • 独語 Kolonie, Kultur(居留地、文化)
    • 仏語 colonie, culture(居留地、文化)
    • 伊語 colonia, cultura(居留地、文化)
    • 西語 colonia, cultura(居留地、文化)

以上のことから、仮説を立ててみました。

印欧語族は「車輪」を発明したといわれる印欧語族は、ユーラシア各地を「徘徊・移動」し、ついには新天地を見つけてそこに「逗留・居住」。
インド方面に渡った一派は、アーユルヴェーダ哲学を興し、人体のスピリチュアル中枢「チャクラ」の発見に至った…。

「車輪」「徘徊・移動」「逗留・居住」「チャクラ」は、すべて「*kʷel-¹」の派生語です。

*kʷel-¹ の変遷から、歴史ロマンが浮かび上がります!

ヨガ

「ヨガ」は、サンスクリット語でも「ヨガ」。語源は、印欧祖語まで遡ることができます。

    • 日本語 ヨガ の語源は
    • サンスクリット語 योग / yóga
    • 印欧祖語 *yeug-(つなぐ to join)

詳しくは、下記の記事をご覧ください。


つぎに、*yeug- の派生語を見ていきます。

    • 古代ギリシャ語 ζυγόν / zugón(くびき、絆)
    • 露語 igo / иго(くびき、絆)
    • 英語 yoke(くびき、絆)、join(つなげる)
    • 独語 Joch(くびき、絆)
    • ラテン語 iungō(つなげる)
    • 仏語 joindre(つなげる)
    • 伊語 giungere(届く)
    • 西語 juntar(つなげる)

「くびき」というのは、「牛などの動物を首の部分で繋げる器具」です。

「ヨガ」がなぜ、「結びつける、繋げる」なのか、ということについては、下記のような説明があります。(出典:Wikipedia

  • 牛馬を御するように心身を制御するということ
  • 自らの感覚器官を制御し、瞑想によって精神を集中する(結びつける)ことを通じて「(日常的な)心の作用を止滅する」こと

三昧(さんまい)

「読書三昧」などの「さんまい」は、サンスクリット語 samādhi(サマーディ)の音写です。

語源を詳しく見てみましょう。

    • 日本語 三昧(さんまい)の語源は
    • サンスクリット語 समाधि / samādhi
    • 印欧祖語 *sem-¹(同一・一緒)+ *dhē-(据える・置く、つくる)

*sem-¹ と *dhē- の語源は、下記記事をご覧ください。

*sem-¹(同一・一緒)+ *dhē-(据える・置く、つくる)から、

(心を)等しく持する → 精神集中が深まりきる → 三昧

という日本語が生まれました。

つぎに、*sem-¹ の派生語を見ていきます。

    • *sem-¹ の派生語は
    • サンスクリット語 सम / sama(一緒に)
    • 露語 sam / сам(等しい)
    • 古代ギリシャ語 ὁμός / homós(同一の)
    • 英語 same, homo-(同一の)
    • 英語 similar(似た)
    • ラテン語 similis(似た)
    • 仏語 similaire(似た)
    • 伊語 simile(似た)
    • 西語 símil(似た)

つぎに、*dhē- の派生語を見ていきます。

    • *dhē- の派生語は
    • サンスクリット語 धा / dhā(置く)
    • 露 delat’ / делать(行う)
    • 古代ギリシャ語 τίθημι / títhēmi(据える・置く)
    • 英語 do(行う)
    • 独語 tun(行う)
    • ラテン語 faciō(据える・置く、つくる)
    • 英語 -fy(行う)、factory(つくる場所=工場)
    • 仏語 faire(行う、つくる)
    • 伊語 fare(行う、つくる)
    • 西語 hacer(行う、つくる)

刹那(せつな)

「極めて短い時間、瞬間」を表し、仏教における時間の最小単位でもある「刹那(せつな)」は、サンスクリット語 क्षण / kṣaṇa / クシャナ の音訳。

さて、kṣaṇa と似ている言葉に、ロシア語 chas / час があります。
語源はスラヴ祖語まで遡れます。

    • 露語 chas / час(hour, o’clock 時)
    • スラヴ祖語 *časъ(時間)

これらは、印欧祖語 *kes-(削る、櫛ですく to scrape, comb)に遡るようです(Wiktionary)。

つまり、サンスクリット語 kṣaṇa と、ロシア語 chas / час が同語源だとすると(あくまで仮定)、下記のようになります。

    • 日本語 刹那(せつな)の語源は
    • サンスクリット語 क्षण / kṣaṇa
    • 印欧祖語 *kes-(削る、櫛ですく to scrape, comb)

木や石を削ったときにできる薄いくず、または、髪をすいたときに櫛につく細い毛髪、これらを古代人は、時間の単位に当てはめて、表現したのだと考えられます。

護摩(ごま)

インド系の宗教に見られる、火を用いる儀式「護摩(ごま)」は、サンスクリット語 होम / homa / ホーマ の音写。

homa とは、「供物、供物をささげること、犠牲、いけにえ」を意味する名詞。
語根は、hu- という動詞で、「 火中に注ぐ・投げ入れる、捧げる、供える」という意味です。

これらの語源は、印欧祖語 *gheu- です。

    • 日本語 護摩(ごま)の語源は
    • サンスクリット語 होम / homa
    • 印欧祖語 *gheu-(注ぐ・流れ出る・流れ込む、酒を捧げる to pour, pour a libation)

*gheu- を語源に持つ英単語は、fuse(溶かす)、fusion(溶解、溶かしたもの)など。

派生語を見ていきましょう。

    • *gheu- の派生語は
    • 古代ギリシャ語 chéo / χέω(注ぐ、溶かす)
    • ラテン語 fundō(流れ出す)
    • 英語 fuse(溶ける)
    • 仏語 fondre(溶ける)
    • 伊語 fondere(溶ける)
    • 西語 fundir(溶ける)

また、con-, re-, di- などの接頭辞がついて、非常に多くの派生語がつくられます。
こちらの記事もご覧ください。

荼毘(だび)

荼毘(だび)は、遺体を火葬して弔うことを表す仏教用語。

その由来は、パーリ語(サンスクリット語の俗語のような言語)jhāpeti / ジャーペーティ の音写で、意味は「燃やす、火を点ける、火葬にする」。
サンスクリット語 ध्यापयति / dhyāpayati に相当するようです。

なお、パーリ語 jhāpeti のもとの動詞は、jhāyati / ジャーヤティ で、「燃える、焼ける」の意。

語源は、印欧祖語 *dhegh-/*dhegʷh-(燃える・暖める to burn; warm, hot)です。

    • 日本語 荼毘(だび)の語源は
    • サンスクリット語 ध्यापयति / dhyāpayati
    • 印欧祖語 *dhegh-/*dhegʷh-(燃える・暖める to burn; warm, hot)

こちらもご覧ください。

派生語を見ていきましょう。

    • 露語 жечь / zhech’(燃やす)
    • 古代ギリシャ語 τέφρα / téphra(灰、燃え殻)
    • ラテン語 febris(熱)
    • 伊語 febbre(熱)
    • 西語 fiebre(熱)
    • 仏語 fièvre(熱)
    • 英語 fever(熱)
    • 英語 day(日)
    • 独語 Tag(日)

パーリ語 jhāpeti ジャーペーティ、サンスクリット語 dhyāpayati ジャーヤティ にもっとも近い同源語は、ロシア語 жечь / zhech’ / ジェーチ(燃やす)ですね!

ゲルマン系の言語では、day, Tag など、「日」を表す語も *dhegh-/*dhegʷh- の派生語と考えられています(異論もありますが)。「太陽が燃えている」ことを、「日」にたとえたのでしょうね。

なお、よく似た語に、ラテン語系の「日」、つまり、diēs(ラ)、giorno(伊)、jour(仏)、día(西)がありますが、これらの語源は、*dhegh-/*dhegʷh- ではなく、*dyeu-(輝く to shine)です。

達磨(だるま)

達磨(だるま)は、中国禅宗の開祖として有名なインドの仏教僧です。

    • 日本語 達磨(だるま)の語源は
    • サンスクリット語 धर्म / dhárma
    • 印欧祖語 *dher-²(しっかり掴む、支える to hold firmly, support)

サンスクリット語 धर्म / dharma は、「法・倫理・規範 law; morality; code」の意味です。

*dher-² の記事はこちらにあります。

*dher-² の派生語を見てみましょう。

    • 古代ギリシャ語 θρόνος / thrónos(王座)
    • 英語 throne(王座)、firm(堅い)
    • ラテン語 firmus(強い)
    • 仏語 fermer(閉める)
    • 伊語 fermo(動かない)
    • 西語 firma(署名、企業)

英語には、ギリシャ語、ラテン語双方の言葉があるんですね!

般若(はんにゃ)

般若(はんにゃ)は仏教用語で、「ものごとや道理を明らかに見抜く深い知恵」を意味します。

    • 日本語 般若(はんにゃ)の語源は
    • サンスクリット語 प्रज्ञा / prajñā(プラジュニャー)
    • 印欧祖語 *per-¹(進む、前に)+ *gnō-(知っている)

つまり、

  1. 「先立つ・知識」
  2. 「くぐり抜けた・知識」

という意味になりますね。

地中海世界で生まれた古代思想で、自己の本質と真の神の認識に到達することを目指した「グノーシス主義」も、まさに *gnō- 。
意味を素直にとらえると、グノーシス = 般若 ということになりますね!

多言語の派生語を見ていきましょう。

    • 古代ギリシャ語 γνῶσις / gnôsis(知識)
    • 露語 znat’ / знать(知っている)
    • 英語 know(知っている)
    • 独語 kennen(知っている)
    • ラテン語 cognōscō(知っている)
    • 仏語 connaître(知っている)
    • 伊語 conoscere(知っている)
    • 西語 conocer(知っている)

閻魔(えんま)

閻魔(えんま)は、仏教やヒンドゥー教などで、地獄、冥界の主とされる存在。
死者の生前の罪を裁く神として、有名ですね。

「エンマ」の音は、サンスクリット語の यम / Yama / ヤマ の音写です。

インド・イラン祖語 *yámHas、印欧祖語 *aim-(写す、模倣する to copy, imitate)に由来します。

    • 日本語 閻魔(えんま)の語源は
    • サンスクリット語 यम / Yama / ヤマ
    • 印欧祖語 *aim-(写す、模倣する to copy, imitate)

さて、「閻魔」と「写す、模倣する」の関係については、下記のとおりです。

閻魔(エンマ)つまり Yama ヤマ には、Yami ヤミ という双子の妹がいました。
そっくりの兄妹 だったため、「写す、模倣する」を意味する *aim- > Yama / Yami という名がつけられた訳です。

つぎに、*aim- の派生語を見てみましょう。

    • ラテン語 imāgō(像)、imitō(模倣する)
    • 英語 image(像)、imagine(想像する)、imitate(模倣する)
    • 仏語 image(像)、imaginer(想像する)、imiter(模倣する)
    • 西語 imagen(像)、maginar(想像する)、imitar(模倣する)
    • 伊語 immagine(像)、immaginare(想像する)、imitare(模倣する)
    • 独語 imitieren(模倣する)

閻魔(エンマ)と image(イメージ)が同源語だなんて、意外だったのではないでしょうか?

阿修羅(あしゅら)

阿修羅(あしゅら)は、サンスクリット語 असुर / ásura / アスラ の音を漢字で写した言葉。

古代インドにおいては、生命・生気の善神で、その名は、サンスクリット語の asu(息、命)に由来します。
時代が下がるにつれ、悪魔・魔神・鬼神として扱われるようになりました。

サンスクリット語以前はどうかというと、インド・イラン祖語 *Hásuras(神格、神)、さらには、印欧祖語 *ansu-(霊魂、精霊 spirit)に遡ることができます。

    • 日本語 阿修羅(あしゅら)の語源は
    • サンスクリット語 असुर / ásura / アスラ
    • 印欧祖語 *ansu-(霊魂、精霊 spirit)
    • 印欧祖語 *h₂ems- (生じさせる to engender, beget)※Wiktionary

派生語を見てみましょう。

    • ヒッタイト語 / ḥaššū(王 king)
    • 古ノルド語 æsir (神 god)
    • 古英語 ōs (神 god)
    • ゴート語 ans (神 god)

ちなみに、英語の男子名 Oswald は、os + wald で、
その語源は、*ansu-(霊魂、精霊 spirit)+ *wal-(強い to be strong)です。

卒塔婆(そとば)

卒都婆(そとば)は、故人を供養するために墓地に立てられる細長い板。
世界各地(インド、スリランカ、中国、チベット、ミャンマー、タイ、パキスタンなど)で見られる仏塔(仏教建築の一種)の形を簡略化したものです。

「そとば」という語は、サンスクリット語 स्तूप / stūpa / ストゥーパ の音写で、現代英語でも、stupa といいます。

語源は、ゲルマン祖語どまりで、残念ながら、印欧祖語までは遡れないようです。

    • 日本語 卒塔婆(そとば)の語源は
    • サンスクリット語 स्तूप / stūpa / ストゥーパ
    • ゲルマン祖語 *tuppaz(木立、茂み;トップ、頂上)

英語の top(頂上、てっぺん) は、stupa の派生語と考えられています。
てっぺんが尖っている仏塔の形から派生した言葉ではないかと思われます。

ちなみに、日本語の「塔」は、「卒塔婆」の省略形のようです。

旦那(だんな)

旦那(だんな)の本来の意味は、「布施をすること、または、布施をするひと」。
もともとは仏教用語で、「布施」を意味するサンスクリット語 दान / dāna / ダーナ の音訳。
檀那とも書きます。

語源は、印欧祖語 *dō-(与える to give)。
英語では donation(寄付、寄進)などの単語に、かつての形が受け継がれています。

    • 日本語 旦那(だんな)の語源は
    • サンスクリット語 दान / dāna / ダーナ
    • 印欧祖語 *dō-(与える to give)

現代日本語としての「旦那」は、仏教用語ではなく、むしろ、印欧祖語の語源「与える」ひと、という意味の方がドンピシャなようです!

派生語は非常に豊富です。一例を挙げるに留めましょう。

    • 印欧祖語 *dō- の派生語は
    • 古代ギリシャ語 δίδωμι / dídōmi(与える)
    • ラテン語 dō < dare(与える)
    • 伊語 dare(与える)
    • 仏語 donner(与える)
    • 西語 dar(与える)
    • 露語 дать / dat’(与える)

こちらもご覧ください。

方便(ほうべん)

方便(ほうべん)は、 サンスクリット語 उपाय / upāya / ウパーヤ の音訳。

印欧祖語には遡れないようですが、下記の記述がありました。

upāya は、upa〜を語幹に持つ動詞(=「近づく」「到達する」)から派生した名詞である。
すなわち、upāya の原義は「近づく」、「到達する」。(Wikipedia

上記から、ウパーヤは、「目的に到達するための道すじ」を表わし、転じて、「方法、手段」の意味を持つようになったと言われています。

シカゴ大学が運営している パーリ語-英語オンライン辞書 に、根拠が掲載されています。

Upāya [fr. upa + i, cp. upaya] approach; fig. way, means, expedient, stratagem

天(てん)

天(てん)は、純粋の日本語かと思いきや、そうではなく、サンスクリット語 देव / devá / デーヴァ(神格、神 deity, god)の訳語のようです。

語源は、印欧祖語まで遡れます。

    • 日本語 天(てん)の語源は
    • サンスクリット語 देव / devá / デーヴァ
    • 印欧祖語 *dyeu-(輝く to shine)

派生語は多数ありますが、たとえば、

    • 古代ギリシャ語 Ζεύς / Zeus(ゼウス)
    • ラテン語 deus(神)、diēs(日)
    • 伊語 Dio(神)、giorno(日)
    • 仏語 Dieu(神)、jour(日)
    • 西語 Dios(神)、día(日)
    • 英語 deity(神)、journey(旅行 < 日帰り旅行)

こちらもご覧ください。

なお、英語 day、独語 Tag は、
印欧祖語 *dhegh-/*dhegʷh-(燃える・暖める to burn; warm, hot)が語源。
間違えないようにしてください!

瓦(かわら)、甲羅(こうら)

瓦(かわら)と、甲羅(こうら)の共通点は何でしょうか?
答えは、両方とも「覆うもの」ということ。ここから語源が見えてきます。

    • 日本語 瓦(かわら)、甲羅(こうら)の語源は
    • サンスクリット語 कपाल / kapāla(カップ・ボウル、頭蓋骨 cup, bowl, skull)
    • 印欧祖語 *kap-(to seize, hold)

*kap- のコアイメージは「つかむ・とらえる、自分のものにする to grasp」。

印欧祖語 *kap- が 瓦、甲羅 となるプロセスは、次のとおりです。

  1. 「つかむ、自分のものにする」を意味する印欧祖語 *kap-
  2. 「容器のようなもの」を意味するサンスクリット語の kapāla(カップ、ボウル、頭蓋骨)
  3. 「覆うもの」である日本語の 瓦 や 甲羅

なお、甍 いらか、鱗 うろこ も、語源は同じく、kapāla < *kap- のようです!

さて、「覆う」といえば、英語の cover を思い起こしますが、
cover の語源は、
*com-(beside, near, by, with)
+ *epi-/*opi-(near, at, against)
+ *wer-⁵(to cover)
なので、*kap- とはまったく別の語源の言葉ということになります。

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