ロシア語とサンスクリット語はとても似ている!|語派、同語源の単語から検証

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日本ではほとんど知られていないのですが、「ロシア語とサンスクリット語はとても似ている」んです。

が、「英語・フランス語、フランス語・イタリア語・スペイン語」の類似性がよく知られていて、(海外では)語学学習にも活用されていることに対し、「ロシア語・サンスクリット語」が似ていることに焦点を当てた情報は、国内ではおろか、海外でも限られています

そこで今回は、「ロシア語・サンスクリット語」の類似性について、語派(言語グループ)と同源語(語源が同じ単語)の二面から考えていきます。

ロシア語・サンスクリット語は「親戚」

まず、ロシア語、サンスクリット語の「言語グループ」的な関係について、確認しておきましょう。

印欧語族に属している

「これら二言語の関係性」自体が、話題になることはほとんどありません。
話題になったとしても、一般論、「ロシア語もサンスクリット語も印欧語族」ということで片づけられてしまいます。

印欧語族(インド・ヨーロッパ語族)とは、下図の色のついた範囲に広がっている言語グループのことです。

Indo-European branches map.png: Hayden120Georgia (orthographic–projection).svg: Giorgi Balakhadze, Flappiefhderivative work: Alphathon / CC BY-SA

ロシア語は「緑のグループ」サンスクリット語は「紺色のグループ」にそれぞれ属し、2つのグループは、北と南に大きく分かれています。

両者のあいだには、カスピ海や、その東側にある緑斜線の地域(トルクメニスタン、タジキスタン、カザフスタン)が横たわっていますが、色は、ロシア語と同様、緑になっています。

近い系統にある

次に、「系統図」を見てみましょう。

出典:Wikipedia > インド・ヨーロッパ語族 > 印欧語族の歴史 > 系統樹と年代

ロシア語は「スラヴ語派」、サンスクリット語は「インド語派」に属します。

先ほどの地理的関係とはだいぶ様相が異なります。

言語の系統で見ると、「スラヴ語派」と「インド語派」は近接していることが分かります。

「サテム語派」に属している

印欧語族の諸言語を、おおもとの祖語(印欧祖語)からの音変化によって分類する学説があります。

「ケントゥム語 Centum language」と「サテム語 Satem language」といい、ロシア語(< スラヴ語派)、サンスクリット語(< インド語派)とも、サテム語に属しています。

下の図は、ケントゥム語とサテム語の地域区分を表しています。

by en:User:Dbachmann / CC BY-SA

ケントゥム語は「青のエリア」(西欧と東のトカラ語)、サテム語は「ピンクのエリア」に相当します。
※「赤のエリア」(コーカサス山脈一帯)は、サテム語の発音の源郷と推定される地域。

サテム語とケントゥム語の違いは「百」を表す単語に見ることができる。ケントゥム (centum) とサテム (satem) は、「百」を表すラテン語の centum とアヴェスタ語の satəm に由来する。この二つの語は同系で、最初の音は印欧祖語では *ḱ として再建される。

[中略]この語は祖語の段階で *kʲmtom という形であったが、サテム語に属するイランのアヴェスタ語で satəm、リトアニア語で šimtas、ロシア語では сто /sto/ などに変化している。

一方、ケントゥム語に属するラテン語ではcentum /kentum/、ギリシャ語では (he-)katon(現: εκατόν)、英語では hund(-red)(*k > h の変化はグリムの法則による)などとなっている。

引用:Wikipedia > ケントゥム語とサテム語 ※改行は引用者による

ようするに、「ロシア語も、サンスクリット語も、音の性質が似ている」ということです!

じっさいに、「百 hundred」に相当する単語が、各語派でどのような音になっているかを示した図が下記になります。

Evolution of “hundred” in Indo-European languages

「ロシア語」は、右上「Russian」の位置、「サンスクリット語」の表記はないですが、右「Proto-Indo-Aryan」のあたりに位置すると考えてOKです。

「英語」は左上、「スペイン語」は左下にありますね。

最後にもうひとつ、言語系統樹を上からみて円形にした図を紹介します。

Indo-European family

「ロシア語 Russian」は、右やや上の赤字部分、「サンスクリット語 Sanskrit」は、中央「PIE」の右側、中ほどの薄紫色で表示されています。

この図でも、「ロシア語とサンスクリット語が近い」ことが良く分かります。
英語とフランス語の関係より近い」というのも、驚きです!

一般の言語系統図では、図の左端・右端(あるいは、上端・下端)に位置する言語どうしは、まったく関係がないような印象を受けますが、上の円形図には「端がない」ので、全言語の近親関係が「公平に」描かれているといえます!

参考:英語とフランス語の関係については、下の記事をご覧ください。

ロシア語・サンスクリット語の同源語

「言語グループ」的な関係について見てきましたが、次は、ロシア語・サンスクリット語の同源語(語源が同じ単語)について見ていきましょう。

同源語がけっこう見つかる

このサイトを始めたのは、「英語の語源学習」を応用して、ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語も効率的に学習できないか? という問題意識がきっかけでした。

英語の語源本は多数出ていますが、単語の由来は「ギリシャ語・ラテン語どまり」というものがほとんど。
英・仏・伊・西のロマンス語に学習範囲を限れば、「ラテン語語源」で十分、武器になります。

が、ドイツ語はゲルマン祖語由来、ロシア語はスラヴ祖語由来の単語が多いので、ギリシャ語・ラテン語で止まってしまったら、共通語源にたどり着けません。

そのようななか、「インド・ヨーロッパ語族」の存在を知り、各言語の「共通語源」つまり「印欧祖語」を探る作業に着手することになりました。

結果は大当たり! というか、想定以上でした。

ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語、さらには、ラテン語、ロシア語の語源を探り、印欧祖語にたどり着く途中に、サンスクリット語がざくざく出てくるのです。

下の記事を読んで頂ければ、「印欧祖語、サンスクリット語、英・独・仏・伊・西・ラテン語、ロシア語」の同源語を、いくつかご覧いただけます(まだ少数ですが、記事は増やしていく予定です)!

ウィリアム・ジョーンズ(Sir William Jones)が、200年以上も前に、「サンスクリット語・古典ギリシャ語・ラテン語の共通語源」について言及したときは、大きな驚き・反響を呼んだそうですが、私も、そのような興奮を味わったというわけです。

優れた研究成果がある

じつは、「ロシア語・サンスクリット語の類似性」について詳細に解説されている素晴らしいサイトがあります。

borissoff Personal site of Constantine Borissoff というサイトです。

応用言語学・コミュニケーション学(ロンドン大学)、東洋哲学(ウラジオストク極東連邦大学)を修めたコンスタンティン・ボリソフ氏によるものです。

ボリソフ氏はなんと、「ロシア語、英語、イタリア語、日本語、サンスクリット語、ウクライナ語、ブルガリア語」のマルチリンガルのようです!

Russian – Sanskrit verbs(ロシア語・サンスクリット語 動詞)の項から、少し転載させて頂きます。

Russian – Sanskrit verbs

中央二列のうち、左がロシア語、右がサンスクリット語です。
どちらも、ラテン文字表記になっているので、分かりやすいですよね。
左端、右端の列は、単語の語義を英語で表現したものです。

中央二列は「音の親近性」、左右両端の列は「意味の親近性」を確認するためのもの。

いかがでしょうか。

サイトを訪問すると、「ロシア語・サンスクリット語 同源語」のロングリストを、じっさいにご覧になることができます!

サンスクリット語・ロシア語「同源語」辞典

上記サイトに感激した私は、その後すぐに Amazon で検索し、一冊見つけたので購入しました。

Inda Lokha, Cognate Words in Sanskrit and Russian, 2007 という書籍です。

紙面はこのようになっています。↓

左のページをご覧ください。

2コラム(2列)表記になっていて、左コラムにサンスクリット語の単語、右コラムにロシア語の見出し語が、「サンスクリット文字」「ラテン文字」で書かれています。

語義の説明は英語で、印欧祖語などの語源が明記されています。

右ページも同じ構成です。

凝ったつくりの、良本です!
おススメしたいのですが、残念ながらすでに絶版で入手不可となっています。

まとめ:印欧祖語の存在感を改めて認識

「ロシア語とサンスクリット語が似ている」ということを、言語グループ(語派)、同源語、2つの観点から見てきました。

じつは、この記事を書いたのは、「ロシア語・サンスクリット語が似ていること」をお伝えするとともに、両者の共通語源である「印欧祖語」の存在感を示したかったからです。

印欧祖語の語源は、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語の学習に、とても役立ちます。

印欧祖語を通じて、多言語学習に興味を持っていただければ幸いです。

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