have のコアイメージは「時空間 領域に持つ」、所有・位置関係・経験 を表す

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have は、よく使われる英語の動詞ランキングで「第2位」。
基本動詞のなかでも、もっとも「英語らしい動詞」といえます。

ヨーロッパ各国語にも、独 haben、仏 avoir、伊 avere のように、have に相当する基本動詞はありますが、英語における have は、それらと比べて、より大きな意味範囲を持っており、さまざまな説明を見ても、「いまいち釈然としない」という方も多いのではないでしょうか?

じつは、have という単語の生い立ちや語源に遡ると、この動詞のキャラがハッキリ見えてきます。

今回は、have の歴史的背景や語源を探りながら、コアイメージを浮き彫りにし、使い方のポイントを文例とともにご紹介します!

結論:have のコアイメージと使い方

はじめに結論です。
have のコアイメージと使い方(文例)をご覧ください。

have =「時空間 領域に持つ」

have のコアイメージは、「時空間 領域に持つ」です。

これは、web情報や書籍に載っている既存の解説を多数分析した結果、私が案出したオリジナルの定義になります。

以下、weblio の説明図が分かりやすいので、この図をお借りして、詳しく説明します。

have のコア(weblio 添付画像)

 

領域」とは、「ある者が領有し、また勢力下に置く区域のこと」です。
上図では、A=ある者、円形=領域 です。

空間領域に持つ

上図の「円形」を「空間領域」と考えてみます。

たとえば、エミリーさんの「身の回り」や「家」です。(自分自身の「身体」も含めます)
エミリーさんを中心にして、半径 5m~10m くらいの「空間領域」(生活空間)をイメージすればOKです。

エミリーさんは、金髪、青い眼をしていて、車を2台所有しているとします。
この場合、エミリーさん=A、髪・眼・車=B です。

英語ではすべて、A has B. つまり、Emily has … のかたちで表せます。

時間領域に持つ

今度は、上図の「円形」を「時間領域」ととらえてみます。

エミリーさんの「身の回りの生活時間(A)に起きるできごと(B)」と考えてください。

シャワーを浴びる、髪を切ってもらう、手紙を書いた など、さまざまな「経験=B」を、
A has B. つまり、Emily has … のかたちで表現します。

have の用法(文例)

具体的な使い方を見ていきます。

空間領域に持つ:所有/位置関係

「所有」の用法

さて、エミリーさんは、金髪、青い眼をしていて、茶色いコートを着ていて、金のイアリングを身につけていて、庭には犬を飼っていて、車を2台所有しているとします。

エミリーさん=A、髪・眼・コート・イアリング・犬・車=B です。

英語ではすべて、A has B. のかたちで表せます。
※3人称・単数・現在なので、have ではなく has ですね。
Emily has blonde hair.
Emily has blue eyes.
Emily has a brown coat.
Emily has gold earrings.
Emily has a dog.
Emily has two cars.

これらの例文は「所有表現」と言われています。
すべて、「A は B を所有している」と見なせる からです。

じっさいには、日本語の「所有」という表現にピッタリはまるのは、「車を所有している」だけですよね。
そのほかの文例は、「髪を所有」「眼を所有」… こじつけ感は否めません。

少しカタい表現ですけれど、「空間領域に持つ」の方が、イメージしやすいのではないでしょうか。

「位置関係」の用法

さて、A=ある者 といいましたが、Aは人間でなくてもOKです。
モノ でも コト でもいいんです。

A がモノである場合の例。
A = the house 家、空間領域 = 家という建物 とすると、
The house has a lot of windows.
その家には窓がたくさんある
The house has a green roof.
その家には緑の屋根がある
The house has eight bedrooms.
その家には寝室が8つある

A がコトである場合の例。
The event has many visitors.
そのイベントには多くの来場者がいる
The exhibition had many visitors.
その展示会には多くのビジターがいた

これらの例文では、領有者(空間領域の主)は「人間」ではないので、「所有」というには無理がありますよね。

家と窓、家と屋根、家と寝室、イベントと来場者、展示会とビジター の「位置関係」を表したものと考えた方が、スッキリしませんか。

でも、カタチは A has/had B. で、「所有表現」と同じなんです。

いかがでしょうか。

「空間領域に持つ」というコアイメージから、①所有、②位置関係 という派生イメージが見えてきたと思います。

時間領域に持つ:経験

「経験」の用法

つぎは、エミリーさんの生活時間に着目します。

Emily will have a shower.
エミリーはシャワーを浴びる
Emily had a shower.
エミリーはシャワーを浴びた
これらの文は、
エミリーは、「シャワーを浴びる」というコトを、「時間領域」(生活時間)に持つ(持った)。
つまり、シャワーという「経験」を表現しています。上の文は、未来経験と過去経験の例です。

Emily had her hair cut.
エミリーは髪を切ってもらった。
エミリーは、「her hair cut 彼女の髪が切られる(過去分詞)」というコトを持った(経験した)。
これは「使役」という用法です。

Emily had him go there.
エミリーは彼をそこへ行かせた。
エミリーは、「him go there 彼がそこへ行く」というコトを持った(経験した)。
これも「使役」用法です。

Emily has written a letter to her mother.
エミリーは手紙を母に書いた。
エミリーは、「written a letter 手紙を書いた」というコトを持っている(経験し、今も経験は生きている)。
一般的には「現在完了」と呼ばれる文です。過去と現在の2つの時にまたがる用法です。

Emily has to write that report by tomorrow.
エミリーは明日までにその報告書を書かなければならない。
エミリーは、「to write that report その報告書を書くというコト」(未来の経験)を持っている。
「ねばならない」の have to ですね。

いかがでしょうか。
have のうしろには、名詞(her hair)、代名詞(him)、過去分詞(written)、不定詞(to write)など、いろいろな語句が続いています。

これらは、すべて、エミリー(A)が、自分の「時間領域」(生活時間)に持つコト=経験(B)と考えればいいのです。

「時間領域に持つ」というコアイメージから、③経験 という派生イメージが見えてくることを確認してください。

have の定義・既存の解説

最初に結論を言ってしまいましたが、ここから先は、辞書や教科書に載っている have の語義・用法や、識者による解説について見ていきます。

語義

have の主な意味は、下のように、「持っている、所有する」などです。

(物的所有・所持の意味で)持っている、(…を)持っている、所有する、身につけている、もっている、与えられている、(ある関係を表わして)もっている、いる、(…が)ある、置いている(weblio

用法

have の用法は、4つあるとされています。

  1. 所有動詞:「持っている・身につけている」などを意味する他動詞 have
    I have two bicycles.(自転車を2台持ってる。)
  2. 完了形・助動詞:have + 動詞・過去分詞(現在完了)、had + 動詞・過去分詞(過去完了)など
    I have forgotten his name.(彼の名前、忘れちゃった。)
  3. 使役動詞:have + 名詞 + 動詞・過去分詞 など
    I have my hair cut.(髪を切ってもらう。)
  4. have to:have to + 動詞・原型
    I have to go to work now.(今すぐ仕事に行かなきゃ。)

基本イメージ

have の基本的なはたらきについて、識者がどのように説明しているか、見てみましょう。

  1. have = 持つ
  2. have : 位置関係 を表す

と、have のはたらきについては、大きく2つの意見があります。

所有・経験空間に何かを持つ

weblio では、have のコアを、「所有・経験空間に何かを持つ」こと、と説明しています。
先ほど引用させて頂いた図は、この記事内にあります。

所有・経験空間に何かを持つ
《A have B》において,have の対象(図のB)は具体物だけでなく考え・時間・問題・関心などのほか行為・出来事も含む(weblio

 

have について、田中茂範氏(慶應義塾大学教授・応用言語学者、コロンビア大学大学院博士課程修了、ベネッセの英語教材の監修など)は、著書のなかで、「have は「所有/経験空間」を表す」と説明しています。

上図でいうならば、
A は B を所有 → A は縄張りをつくり、そこに B というモノ・コト(経験)を位置させる ということになります。

have は「所有/経験空間」を表す
have という動詞は基本的には「所有」を表し、そこから「主語の(いる、ある)ところ」という「縄張り」の概念が生まれ、私たちが生活する直接的な、個人的な経験空間を示すようにもなっています。
[中略]
have は HAVE空間(主語の所有/経験空間)を表し、その内部にモノやコトを位置させるところに特徴があります。(『イメージでわかる・使える英単語【動詞編】』田中茂範、2019年、アルク)

位置関係をあらわす

一方、大西泰斗氏(東洋学園大学教授・言語学者、元オックスフォード大学客員研究員、NHKラジオ・教育TVで英語講座を担当)は、have は「基本的に位置関係をあらわす」と言い切ります。

have のイメージは「静」。そこに動きは感じられない。have は hold のような「手に持つ」という行為を意味しないのだ。「~のところにある」と、基本的に位置関係をあらわす表現なのである。(『英文法をこわす 感覚による再構築』大西泰斗、2003年、NHK出版)

have のバックグラウンド

今度は視点を変え、have というコトバの歴史的背景と語源を見てみましょう。

歴史的背景

have の歴史的変遷を、年表に表してみました。
似たような図はどこにもないため、語源辞典(etymonline.com)や Wikipedia を参考に、仮説を組み立てながら表現したオリジナルの図になります。

この内容について、詳しく見ていきます。

語源は *kap-

have の由来・語源・同源語は、下記の通りです(参考:語源辞典 etymonline.com)。

  • 直接の由来:古英語 habban(所有・所持する;~の対象となる;経験する)
  • 語源:ゲルマン祖語 *habejanan(to have)< 印欧祖語・語根 *kap-(つかむ・握る)
  • 同源語:ゲルマン祖語からは、古ノルド語 hafa、古ザクセン語 hebbjan、古フリジア語 habba、ドイツ語 haben、ゴート語 haban(いずれも to have の意)なども派生

原文:Old English habban “to own, possess; be subject to, experience,” from Proto-Germanic *habejanan (source also of Old Norse hafa, Old Saxon hebbjan, Old Frisian habba, German haben, Gothic haban “to have”), from PIE root *kap- “to grasp.”(etymonline.com)

どうやら have は、生粋のゲルマン語系のコトバなんですね。
英語には、フランス語、ラテン語、ギリシャ語由来の単語がかなり混ざっているのですが、これらとはまったく関係がないようです。

さて、have の語源は、印欧祖語の語根 *kap- です。

関連記事に書きましたが、*kap- のコアイメージは「つかむ・とらえる、自分のものにする to grasp」。

単語例は ᴄᴀᴘᴛᴜʀᴇ / ᴄᴀᴘᴀᴄɪᴛʏ / ᴀᴄᴄᴇᴘᴛ / ʜᴀᴠᴇ / ʜᴇᴀᴠʏ などです。

これらの単語のうち、語源 *kap- のコアイメージにもっとも近いのは、capture です。
下記が capture の語義です。

(抵抗・困難を排して)捕らえる、ぶんどる、捕虜にする、占領する、攻略する、獲得する、取る、とらえる、魅了する、(画像や言葉で)(永続的な形で)とらえる(weblio

大西氏の言う、「静的」なイメージとはずいぶん違いますね…。

田中氏の「縄張り・所有」説に近いのですが、厳密にいうと、capture は「所有」の前プロセス、つまり、「獲物(・敵)を捕らえて、縄張りのなかに引っ張って来る」行為を表しています。

*kap- は、印欧祖語ですが、印欧祖語が話されていた(と仮定される)のは、ゲルマン諸語のエリアに限って言うならば、

およそ、4,500年(クルガン仮説)~6,000年(アナトリア仮説)の長期間。
日本の縄文時代(おおむね前期~晩期)にまるまる含まれる時代です。

面白いことに、*kap-、capture のコアイメージは、現代英語の文脈でもよく使われています。

PC画面のスクリーンショット、スマホでの撮影のことを、「capture キャプチャー」といいますよね。
「映像を撮らえて(とらえて)、自分のものにする」という意味です。

元々は「所有」を意味しなかった

さて、語源辞典に戻ります。ここには、重要なことが書かれています。

じつは、have には元々、「所有」の意味はなかったようです!

「所有する、利用の自由を有する」という意味は、英語以前の言語から転じたもので、古代言語においては、被所有物が主語となり、所有者は与格で表された。たとえば、

  • 英語:I have a book.
  • ラテン語:Est mihi liber.
    est = there is、mihi(与格)= to me、liber(主語)= a book

原文:Sense of “possess, have at one’s disposal” (I have a book) is a shift from older languages, where the thing possessed was made the subject and the possessor took the dative case (as in Latin est mihi liber “I have a book,” literally “there is to me a book”).(etymonline.com)

上のラテン語例にあるように、モノ(被所有物)が主語で、所有者は二次的情報(与格)だったんですね。

もうひとつ、例文を紹介します。

タイトル画像(女性がプレゼントを抱えている写真)をご覧ください。
英語では、このシーンを、どのように表現するでしょうか。

いちばんシンプルに英語で書くならば、

  • The girl has a present. でしょうか。
  • The girl(女性は・主格)+ has(持っている・所有動詞)+ a present(プレゼントを・対格)

ラテン語で書くならば、

  • Feminae donum est.
  • feminae(女性に・与格)+ donum(プレゼントが・主格)+ est(ある・存在動詞)
  • feminae は女性名詞・単数形 femina の与格(てにをは の「に」に似た用法)です。

ロシア語でも似たような構文になります。

  • У девушки подарок есть.
  • У девушки / U devushki(女性において・生格)+ подарок / podorok(プレゼントが・主格)+ есть / est’(ある・存在動詞)
  • У は前置詞「において」、девушки は女性名詞・単数形 девушка の属格(=生格)です。

この、ラテン語やロシア語の文には「存在動詞」(英語の be 動詞にあたる)が含まれていますが、このような文を、「存在文」といいます。

英語の The girl has a present.(所有表現)は、存在文に直すこともできます。
There is a present at the girl. となりますが、英語文としては、不自然ですね。

ところが、ラテン語、ロシア語、さらには、中国語でも、「存在文」の方が普通のようです。

存在文を所有表現に用いる言語もかなり多い。これは、存在表現「A(場所)には何々がある」と所有表現「A(人)は何々を持っている」が意味論的に近接していることによる。日本語では所有が行為として具体的でない限り「誰々に何々がある(いる)」というのが普通であり、中国語(上記)やロシア語などでも同様の表現が普通である。(wikipedia

日本語でも、

  • 「鳥は羽根を持っている = Birds have feathers.」とは言わずに、
    「鳥には羽根がある」
  • 「あの子は才能を持っている = That boy has talent.」とは言わずに、
    「あの子は才能がある」

と言いますよね。

さきほどのタイトル画像は、「プレゼントを持っている」というより、「腕に抱える」という行為のシーンなので、日本語でも、不自然でない「所有表現」ができますが…。

所有 は「位置関係」で表した

さて、
「女性に・プレゼントが・ある」
「女性において・プレゼントが・ある」
というラテン語、ロシア語の文(存在文)は、女性とプレゼントの「位置関係」を表したものにほかなりません。

つまり、

印欧語族は、およそ4,500~6,000年の長期間にわたって、
「所有」の概念を、「位置関係」として表現してきた

構文としては、
have のような所有動詞をつかった表現ではなく、
存在動詞(be 動詞)をつかった「存在文」で言い表してきた

という仮説が成り立つと考えます。

ゲルマン祖語で「所有動詞」登場

では、have(印欧祖語 *kap-) が「所有」を意味する所有動詞(他動詞)になったのは、いつでしょう?

確たる証拠はありませんが、「ゲルマン祖語からは、古ノルド語 hafa、古ザクセン語 hebbjan、古フリジア語 habba、ドイツ語 haben、ゴート語 haban(いずれも to have の意)なども派生」(前出)しているのであれば、

所有動詞 have の誕生は、
ゲルマン祖語が成立した時期(紀元前5世紀=2,500年前頃)以降

と考えられます。

ではなぜ、ゲルマン諸語では、have が「所有」を表すようになったのでしょうか?

私の仮説ですが、

印欧祖語・語根 *kap の原義は、
「つかむ・とらえる、自分のものにする」だったものの、
その行為の結果として、
「所有する・所持する・持っている」をも意味するようになった

のではないかと考えます。

所有動詞 have の本格化は、ノルマン・コンクエスト以降

さて、have は他動詞なので、主語(主格の語)と、目的語(対格の語)を必要とします。
つまり、いわゆる「S・V・O」の形式が必要になるわけです。

これに関して、金谷武洋氏(元モントリオール大学東アジア研究所日本語科科長・言語学者)は、じつに興味深い説を発表しています。

ノルマン・コンクエスト以前の古英語の時代は、主語がなかった」という仮説です。

第二期から第三期が、英語の場合は先に見た古英語から中英語への移行にあたる。ノルマンの征服を境とした変化だ。中英語に至って「主語のための指定席が用意された」のである。

第三期に至って、[中略]初めて英語に行為者となれる「主語」が出現した。[中略]それは、支配者のフランス語と被支配者の英語が英国において300年間、激しく入り乱れた結果であった。主語はこうした乱世下に発生した。(『日本語と西欧語 主語の由来を探る』金谷武洋、2019年、講談社)

古英語(Old English)とは、450年(1,570年前)頃から1150年(870年前)頃※まで、およそ700年間にわたってイングランドで使われた言葉で、アングロ・サクソン語とも呼ばれ、印欧語族のゲルマン語派に属し、現代英語の祖語にあたる言語。
※金谷武洋氏は、700~1100年(400年間)としています。

参考:英語の歴史的変遷について、分かりやすい画像がありましたので、紹介しておきます。

https://www.thehistoryofenglish.com/history.html

 

さて、ここから先は、私の推測になります。

本来、何かを「所有」できるのは(所有の「主体」となり得るのは)、「人間」か「神」に限られます。

しかし、「主語」が重んじられるようになった結果として、

「人間、神」以外のモノ・コトも「主語」とみなされて、
モノ・コトが何かを「所有」する体裁をとって(=モノ・コトを擬人化し)、
「位置関係」を表すようになった

のではないでしょうか。

たとえば、
The house has many windows.
その家は多くの窓を持っている(その家には窓がたくさんある)
のような S・V・O構文がその典型と考えられます。

構文(文法)はともかく、この文の意味するところは、「所有」ではなくて「位置関係」ですね。

S・V・O構文についても、金谷武洋氏が重要なことを述べています。

他動詞文の語順については統計がある。中尾俊夫の前掲書(サイト管理人註:『英語の歴史』1989、講談社)によれば、現代英語のSVO語順は、近代英語を代表するシェークスピア(1564-1616)で90%以上、中英語の代表チョーサー(1340頃-1400)では84%だが、古英語のアルフレッド大王(849?-899)ではついに50%を割って40%まで下落するのである。

古英語で40%だったSVO語順は、中英語では一気に84%に跳ね上がるのだ。

指定席を得た主語も最初は行為者のみを表さなかったが、SVO他動詞構文の多用に伴い、次第に行為者として解釈されることが増え、「する言語」化して行ったと思われる。(『日本語と西欧語 主語の由来を探る』金谷武洋、2019年、講談社)

「する言語」とは、他動詞を多用する言語のことを指しています。
反対に、存在動詞(be 動詞)を多用する言語を、「ある言語」といいます。

つまり、ゲルマン祖語時代に have(*habejanan) が「所有」を意味するようになったとはいえ、

元来、存在動詞によって表されていた「位置関係」をも、
他動詞 have が表現するようになったのは、
(主語が重んじられるようになった)ノルマン・コンクエスト以降

ということが推察されます。

バックグラウンドのまとめ

ここで、have の歴史的経緯について整理すると、つぎのようになります。

  1. 印欧祖語の時代:語源 *kap- は「つかむ・とらえる、自分のものにする」を意味。
    およそ 8,500年前~2,500年前(6,000年間)←アナトリア仮説
    およそ 7,000 or 6,000年前~2,500年前(3,500~4,500年間)←クルガン仮説
    この期間、「所有」を表す動詞に 存在動詞 を使用(「位置関係」として表現)。
  2. ゲルマン祖語の時代:have(*habejanan)登場。「所有」を表す動詞に have を使用。
    およそ 2,500年前(紀元前5世紀)~ ※ゲルマン祖語の終焉時期は不明
  3. 古英語の時代:上記同様、「所有」を表す動詞に have(habban)を使用。
    およそ 1,570年前(450年)~870年前(1150年)(700年間)
    金谷氏の説では、1,320年前(700年)~920年前(1100年)(400年間)
    ゲルマン祖語の時代、古英語の時代を合わせると、2,500年前~870年前(1,630年間
  4. ノルマン・コンクエスト以降:have が「位置関係」も表すように
    およそ 960年前(1060年)~(960年間

まとめ:have は「時空間 領域に持つ」で、所有・位置関係・経験 を表す

have の語源は、印欧祖語・語根 *kap であることから、原義は「つかむ・とらえる、自分のものにする」ですが、その行為の結果として「所有する・所持する・持つ」を意味します。

「所有」は、空間・時間の両方におよび、まとめると下のようになります。

have のコアイメージは「時空間 領域に持つ」
・空間領域に持つ:所有/位置関係
・時間領域に持つ:経験

ノルマン・コンクエスト以降、英語のなかで「主語」が重要視されるようになったことを受け、(本来は何かを所有することなどできないはずの)モノ・コトも擬人化されて主語となり、単なる「位置関係」を示す文脈においても、have が使われるようになった、と考えられます。

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